『閉じた本』 ギルバート・アデアブッカー賞作家ポールは事故により眼球を失い、隠遁生活を送っている。しかし最後の著書、回想録を書くためにジョンを雇う。 彼に“目”となってもらい、ジョンが見たものをそのまま言葉に表現してもらい、それをポールの“経験”とするために。 ジョンはポールの家に住み込み、ポールの執筆の手伝いを始める。 ポールはプライドの高い偏屈なじいさんです。 眼球を失ってしまいましたが、自分の生活は完璧に把握したいと願い、またそのように生活をしている。 部屋の中の家具の場所のみならず、例えばドレッサーの中にかかっているネクタイも、どの順番であるかを記憶して、また戻すときはその順番どおりにする。 ところが自分でしていると思っていたはずの柄と違うネクタイをある日しめている。 こんな風に、ポールの確固たる自信のもとに送られていた生活は、ひずみがおき、やがて加速度がついて壊れていきます。 そしてポールは、ジョンを疑うようになる。 ポールの視点(見えないのですけども、この場合も視点と言うのかなぁ)で書かれていって、自分に疑いを持ち、訳のわからぬ不安にかられ、それが徐々に大きくなっていく様子が描かれ、恐いです。 ただ“犯人”が何故そのようなマネをポールにするかを語る部分があるのですが、私はこれはないほうが良かったと思う。 その時の状況までもが犯人の口から語られるのですが、これで一挙に俗っぽくなってしまった感があり、残念。 最後のどんでん返しも、予定調和ですが、私はこういう風にきちんとあるべき姿に収まってくれる方が好きです。 |